[[インターネットはなぜ成功したのか]]について、イノベーションが連続的に発生する条件が整っていたからではないか、と考えてみた。イノベーションは段階的に起こるし、どこにブレイクスルーがあるか予想できない。よって、一層ずつ積み上げるのが最速なのではないか。 ではどのように次のイノベーションの土台となる層が形成されるのか、という話になる。それが未来に向けて可能なことであるように思われるので。 [[インターネットヒストリー]]に描かれたブレイクスルーをみていくと、ある課題が常態化しているところに、効率的に解決する方法が持ち込まれ、必要性を完全に充足して課題を解消していく過程があるように見える。別のネットワーク上に存在するコンピュータが、互いに確実にパケットを届け合うために不十分な方法が乱立している状況で、TCP/IP が実装され、標準として提案され、古いプロトコルを塗り替えて行き渡る。行き渡るどころか、当初想定されていた以上の規模で利用されて新しい課題 (IPアドレスの枯渇など) に直面していくなど。インターコネクションの問題が解決して、すべてのコンピュータが互いにつながることに不思議さがない状況=イノベーションの新しい層に到達している。 この例で重要なのは、ネットワークが互いに繋がることを特に意味づけず、その価値を定義せず、なんならそれほど深く想定せずに、コンピュータ同士を繋ぐと言う課題に対して、それ以上考える必要のない状況を生み出した、と言う点にあるように思われる。 技術が確実であるために、遠くのコンピュータと通信していることについて考える必要がなくなった時に、その状況を前にして人々が何を求め始めるか。それを予想してもいいが、おそらく必要ないことである。それを予想するということは、次のブレイクスルーの発生地点やイノベーションの行く末に対して予期的に振る舞うということにつながる。これが、目の前にあるまだ完全に解決していない問題 (別のネットワークに繋がった遠くのコンピュータと通信する) から目を逸らしたり、その問題に対する取り組みを純粋でないものにする危険がある。 次のブレイクスルーを生み出すのは、適切に問題を切り出し、その問題がもう存在しないと感じられるレベルで完全に解決すること。なのではないか。完全な解決が可能で、それ自身ではない問題に依存しない問題を切り出すことは簡単ではなく、そこがブレイクスルーの源泉またはイノベーションの神秘を握っているということになるだろう。しかし、それが見出された後は、完全な解決が見つかるのを待つしかなく、それを促したり予見しようという態度はむしろ発見を遅らせる、ということは言えるのではないか。 この想定も、[[アジャイル]]開発の推奨することと共通点があるように思われる。