どちらかというと煙たがられ、恐れられ、神聖視され…世間を賑わせたことはあれど、教科書に載せて推奨するには至らない程度に敬遠されてきたのが、ハッカーの話である。しかしアジャイルや[[Scrum|スクラム]]をソフトウェア開発以外の活動にも応用しようというアイディアは、すっかりポピュラーになった。その起源には、プログラマー達がその活動のために生み出した独自のマナーがある。ここではそれをハッカー文化と呼び、その価値を伝える言葉巧みな語り手たちに触れていこう。 翻訳家として知られる山形浩生。自身のウェブサイトでは膨大なハッカー文化に関連する資料を公開しており、その中にはハロウィーン文書の日本語版 (https://cruel.org/freeware/halloween.html ) がある。ハロウィーン文書は、90年代にエリック・レイモンドによってリークさたマイクロソフト社の社内文書で、オープンソース勢力とプロプライエタリ勢力が葛藤するソフトウェアの世界を理解するための、重要な資料である。通史は『インターネット・ヒストリー』(オライリー・ジャパン) などの書籍で読めるが、そこに登場するメールや議事録の翻訳はなかなかない。 原文を掲載するエリック・レイモンドのサイトを訪れてもらえば、山形のウェブサイトと類似点があることに気づくだろう。エリック・レイモンドはハッカー文化のスポークスマン役を引き受けた人であり、オープンソースという言葉を発明した人でもある。ウェブサイトひとつとっても、その文化にふさわしい所作に満ちている。ウェブサイトに置かれた山形の一連の翻訳は、内容だけでなくそのハッカー由来の佇まいによって、日本語世界からハッカー文化へ通じるワームホールとして存在している。 [[山形浩生]]