海馬(Hippocampus)とは、**大脳辺縁系にあるU字型の脳構造**で、記憶の形成や空間認知に重要な役割を果たす部分である。名前はラテン語で「カモノハシ(hippocampus)」に似ていることから付けられた。
### 主な役割
- **エピソード記憶の形成**
個人的な体験や出来事を、時間や場所の文脈とともに整理して一時的に保持する。
- **意味記憶への統合**
一時的に保持した記憶を、大脳新皮質に送り出して知識や一般化情報として定着させる(システム記憶固定)。
- **空間認知・ナビゲーション**
自分の位置や環境の地図情報を処理する。ラットの迷路学習などで活性化が観察される。
### 神経回路の特徴
- [[腹側被蓋野(VTA)|VTA]]や[[青斑核(LC)|LC]]などから[[ドーパミン]]や[[ノルアドレナリン]]の信号を受け取り、経験の重要度や新奇性に応じて記憶を強化する。
- 海馬内で[[シナプス可塑性]](神経回路の強化や弱化)が起こり、経験の情報を短期記憶から長期記憶に変換する。
### 補足
- 海馬は記憶の「一時保存庫」と「整理部門」の両方の役割を持つ。
- 損傷すると新しい出来事の記憶が形成できなくなる(前向性健忘)ことが知られている。
まとめると、<mark style="background: #FEF19AAB;">海馬は、出来事や体験を記憶として整理・保持し、後に知識や意味として定着させる脳の「記憶中枢」</mark>である。